インプラントとブリッジ:どちらを選ぶべきか?
歯をむし歯やケガなどで失ってしまった場合、治療法を選ぶ際にインプラントとブリッジの比較検討が重要となります。どちらの治療法を選ぶかによって、残りの歯にかかる負担が変わるからです。それぞれの特徴を知らずに治療法を決定すると後悔するかもしれません。本記事では、2つの治療法を比較しつつ、その他の治療オプションも紹介します。歯科医院を訪れる前に、どのような選択肢があるかを理解しましょう。
※掲載される平均費用は参考価格であり、実際の治療内容や症状に応じて変動する可能性があります。治療方針は各歯科医院によって異なりますので、患者ご自身のケースに合った歯科医院を選ぶことが大切です。
インプラントとブリッジの比較
噛む力 | 顎の骨 | 治療期間 | 耐用年数 | 費用 | |
ブリッジ | 元の歯の約60パーセントほど | 骨が吸収されて痩せていく | 1週間~2週間ほど | 平均で8年ほど | 保険3万円ほど 自由診療15万~30万ほど |
インプラント | 元の歯と変わりなし | 骨が痩せにくい | 3か月~6か月ほど | 10年~30年ほど | 1本につき30万円~40万円ほど |
1-1. ブリッジ
ブリッジは、失った歯の前後にある歯を削り、歯をつなげて新たな歯を作る治療法です。まるで橋をかけるようなイメージから「ブリッジ」と呼ばれます。保険適用のレジン(プラスティック素材)を使用する場合、後々変色する可能性があります。オールセラミック素材を選択することで、見た目は非常に自然で違和感がほとんどありませんが、費用は高くなります。
噛む力は元の歯の約60%程度とされていますが、ブリッジを支える隣の歯の状態に依存しているため、支える歯に問題がある場合、噛む力が低くなることもあります。ブリッジをかける歯に特に問題がない場合、噛む感覚は元の歯とそれほど変わりません。入れ歯などの場合は味覚を感じにくくなることもありますが、ブリッジの場合、元の歯と変わりません。
歯を失うと、あごの骨が吸収され、骨の減少が始まります。ブリッジでは骨の吸収を防ぐことはできません。治療の本数や複雑さによりますが、単純な場合は比較的短期間で終了することがあります。通常は1〜2週間程度で、2回の訪問で治療が完了することもあります。
ブリッジの場合、新たな歯を支えるために前後の歯を削る必要があります。支える歯を削る必要があるため、デメリットとされています。治療後に歯茎の状態や支える歯の状態が悪化した場合、ブリッジの再構築が必要となることもあります。
個人差はありますが、平均で約8年ほど持続すると言われています。保険適用の場合、約3万円(本数や歯の状態による)。見た目を重視する場合、自由診療となり、オールセラミックのブリッジは本数に応じて約15万円から30万円となります。
1-2. インプラント
インプラント治療は、失った歯の代わりにチタン製のインプラント(歯の根っことなるネジのようなもの)を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を取り付ける外科手術の治療法です。インプラントは、失われた歯の根っこを再現します。
インプラントにオールセラミックの被せものを使用することで、元の歯とほとんど変わらない自然な外観が得られます。噛む際の力は元の歯とほとんど変わりません。自分の歯と同じように食事や飲み物を楽しむことができます。また、インプラントはしっかりと固定されるため、外れたりズレたりすることがありません。そのため、噛む際の違和感は元の歯とほとんど変わりません。加えて、インプラントの場合、元の歯と変わらず味覚を感じることができます。
インプラントを埋め込むことで、あごの骨の吸収を防ぎ、骨の減少が起こりにくくなります。ブリッジや入れ歯と比較して、インプラント治療は通常3か月から6か月ほどかかります。ただし、診療回数はそれほど変わりません。
インプラントは治療期間は長くかかることがあり、保険が効かないため、高額な治療になることが一般的です。ただし、インプラントが顎の骨と結合すると、非常に安定し、寿命が長いことが特徴です。適切な歯周病の予防とメンテナンスが行われる場合、インプラントはおおよそ10年から30年持続することがあります。ただし、土台や被せものの素材に依存します。インプラント治療は保険が効かない自由診療となり、クリニックにより異なりますが、通常は1本あたり30万円から40万円ほどの費用がかかります。
インプラントはこんな人におすすめ!
2-1. ほかの歯を削りたくない人
インプラントは、周囲の健康な歯を削る必要がない独立した治療です。ブリッジの場合、健康な歯を削る必要があるため、インプラントはこの点で利点があります。
2-2. 残った歯に負担をかけたくない人
歯が抜けると、その分の噛む力が周囲の歯にかかります。インプラントは、噛む力を元の90%ほどまで戻すことができ、周囲の歯にかかる負担を軽減できます。
2-3. 再治療やメンテナンスを簡単にしたい人
インプラントは独立しているため、再治療やメンテナンスが容易です。一部の歯の修理やメンテナンスが必要な場合、インプラントは被せものを外す必要がないため、簡単に対応できます。
ブリッジはこんな人におすすめ!
3-1. 外科手術が嫌な人
ブリッジ治療は、歯の前後にある健康な歯を支えとして新しい歯を作るため、外科手術が不要です。インプラント治療とは異なり、ブリッジ治療では歯茎を切ったり骨を削ったりすることがありません。外科手術に抵抗がある場合、ブリッジ治療が適しています。
3-2. 治療期間を短縮したい人
歯が抜けた後、または歯を抜いた後、歯茎が治ればすぐにブリッジ治療が行えます。ブリッジ治療は一般的にインプラント治療よりも短い期間で完了することがあり、最短で2回の診療で治療が終了することもあります。
3-3. 費用を抑えたい人
予算に制約がある場合、保険が適用されるブリッジ治療が選択肢として考えられます。硬質レジン前装冠という白い材料を使用したブリッジ治療は、一般的に保険が適用される前歯(犬歯まで)に適用されます。保険の適用分では、インプラントに比べて費用がはるかに安い傾向にあります。
3-4. 歯を削りたくない人には接着性ブリッジ
奥歯や噛む力がかかる部分には適用できないかもしれませんが、前歯など噛む力が比較的かからない箇所に使用できるのが「接着性ブリッジ」です。接着性ブリッジは、失った歯の両隣の歯に接着して固定されます。隣の歯を削る必要がなく、麻酔をかける必要もありません。ただし、通常のブリッジやインプラントとは異なり、硬い物を噛む際には注意が必要で、費用は高めです。外観は非常に自然で美しいため、見た目にこだわる人に向いています。
インプラントやブリッジ以外の治療
4-1. 部分入れ歯
一般的な部分入れ歯は、歯に取り付けられる金属バネが見えることがあり、他の人に気付かれることがあります。保険が適用される場合もありますが、噛む力が元の歯の30%ほどに制限されることがあり、硬い物を噛むのが難しいことがあります。
4-2. 目立たない入れ歯
部分入れ歯の中でも、歯と歯茎の色が一致しているため他人からはほとんど気付かれない入れ歯も存在します。噛む力の制約はあるものの、見た目にこだわる人に向いています。費用は一般的な部分入れ歯に比べて高くなることがあります。
4-3. 親知らずの移植(歯牙移植)
歯牙移植は、親知らずや埋伏歯(歯茎に埋まっている歯)を使用して、歯を補う方法です。特定の条件を満たす歯に限り保険が適用されることがあり、費用は一部自由診療の場合もあります。
4-4. 抜けた歯の位置に親知らずを移動
歯が抜けた場所に親知らずや他の歯を移動して歯を補う治療方法も存在します。この治療には歯の矯正が含まれ、治療期間は6か月から2年ほどかかることがあります。
まとめ
失った歯を補うためにはインプラント、ブリッジ、部分入れ歯など複数の治療方法があります。長期的な視点から見ると、インプラントがおすすめです。インプラントは他の歯に負担をかけず、耐用年数が長いのが魅力です。しかし、インプラントは外科手術であり、歯医者の技術や経験に大きく依存するため、選択するクリニックを慎重に選ぶ必要があります。
ただし、見た目だけを改善したい場合、「接着性ブリッジ」といった方法も考慮できます。ただし、この方法では歯に力がかからないため、残りの歯に負担がかかり、噛む癖が偏る可能性があることに留意が必要です。
どの治療方法を選ぶかを決定する前に、それぞれの治療のメリットとデメリットを検討し、自身の状況に合った選択をすることが重要です。最初に美容診療を行っている歯医者をいくつか選び、相談してみることをお勧めします。